「家族信託」で相続税の節税をしたい???

 

「家族信託をすれば、父が認知症になっても暦年贈与を継続することができ、相続税が節税できます。」という説明を見たことがありますか?

 

相続税の節税のための「暦年贈与」。

これは、贈与税の基礎控除額(1年間に110万円)を利用して、「父が子供3人に対し、毎年110万円分の贈与をする」等の方法で、相続財産を圧縮し、相続税の節税を計るものです。

しかし、父が認知症等で判断力が無くなってしまうと、「贈与する」ということができなくなります。

そこで、家族信託を利用し、父の判断力がしっかりしているうちに財産を託してもらい、託された人が、父の判断力が無くなった後もずっと、毎年の贈与を継続すれば良い、という説明です。

 

でも、ここで私は「?」マークが「???…」と、たくさんついてしまいます。

そもそも「家族信託」とは、託す人(委託者・例:父)・託される人(受託者・例:長男)・その利益を受ける人(受益者・例:父)で成り立っているものです。家族信託で利益を受けるのは、受益者(例:父)です。

「相続税の節税のために、暦年贈与を継続したい」というのは、相続税を支払う側、つまり子供たちの利益であり、父の利益ではありません。

 

父が本当に「子供たちが相続税をたくさん支払わなくて良いように、毎年贈与をずっと続けたいのだ」と思っているのならば、その思いを実現させてあげることは父のためになることでしょう。ただ、「相続税の節税=子供たちの利益」のために「家族信託」をする、と考えると少し違和感があるのです。

 

「認知症対策としての家族信託」。これは、あらかじめ財産を託してもらって、父や母が認知症等になってしまっても、その生活に困らないように、子供たちが支える、というものです。

もちろん、そのなかで財産の組み換え等により、相続対策(もめない対策)や相続税対策(節税対策)になることを行うことができますし、あり得ることです。

ただ、「家族信託」によって利益を受けるのは受益者(父や母)であり、子供たちではない、ということは、しっかり認識しておく必要があると思います。