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父が年老いてきた。長男は仕事の都合で東京暮らし。実家は父と次男家族が同居している。妹二人はそれぞれ結婚して家を出ている。
父はいつも口癖のように「家は次郎に継がせる」と言ってくれるが、やはり遺言を書いてもらった方が良いだろう。
父に話をすると、同意してくれ、震える手で書いてくれた。
「遺言
家は次郎に継がせる。
平成〇年〇月〇日 鈴木一男 印」
自筆証書遺言の3つの条件
すべての条件はクリアしている。
これでひと安心?
残念ながら、安心するのはまだ早いです。
この、お父さんが書いてくれた遺言。これで、「この日付のときにお父さんはこう考えていた、こうしてほしいと思っていた」という気持ちはわかります。しかし、これを使って不動産の名義変更をすることは難しいです。いえ、難しいのではなく、名義変更はできません!
遺言を使って不動産の名義変更をしようとする場合、「誰が、誰に、何を、どうする」がハッキリしていないとできません。
誰が:遺言者の住所・氏名(住所と氏名は、必須です)。
誰に:「次郎に」では、どこに次郎さんか、わかりません。
「次男 鈴木次郎に」
生年月日を書いておくとより良いです。
「次男 鈴木次郎(昭和年月日生)に」
何を:不動産の明細(所在・土地の地番・家の家屋番号)が必要。
「家を」「自宅を」「小川町の土地を」などの記載では、名義変更できません。
どうする:「相続させる」(法定相続人に対する場合)
「遺贈する」(法定相続人以外に対する場合)。
遺言が不動産の名義変更に使えないものであれば、遺産分割協議書を作る必要があります。
遺産分割協議書は、相続人の全員が合意し、実印を押す必要があります。
そこでもめてしまうと、名義変更できません。
せっかくお父さんに遺言を書いてもらうのであれば、名義変更に使えるものを書いてもらいましょう。
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