長女:「母が亡くなってから、すっかり気力がなくなった父。一人暮らしが難しくなったので、父の家は空き家にし、私たち夫婦と同居することになりました。

 

いずれ、父に介護が必要になったとき、その費用に充てるため、実家を売却することになるだろうと思っています。」

 

えっ!?ちょっと待って!!「父に介護が必要になったとき、実家を売却する」ことはできないかも知れませんよ!!

介護が必要となった、つまり、判断力が低下して自分で自分のことができない状態のときに、“自分の家を売る”という契約をするのは、本人ではできません。

 

では、どうするか。

判断力が無くなってから家を売るには、「成年後見制度」を利用します。家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらいます。後見人が本人(この場合は父)の財産を管理します。そのうえで家の売却が必要だと後見人が判断すれば、売却をします。

売却後も本人(父)が亡くなるまでずっと、後見人が財産を管理し、家庭裁判所の監督が行われ、報告書の提出などを行わなければなりません。

また、後見人や後見監督人に専門職(弁護士・司法書士等)が選任された場合には、その費用がかかります(月額数万円)。費用は本人が亡くなるまでずっと、かかります。

 

何か良い方法はないのでしょうか?

今のうちにもらっておく?それは「贈与」。贈与税がかかります。贈与税は高いです。特例(相続時精算制度:贈与税を相続税で精算するもの)を利用すれば、そのときには贈与税を支払わないで済む可能性もあります。しかし、登録免許税、不動産取得税は支払わなければなりません。そして贈与してもらった実家を売却すれば、譲渡所得税を支払わなくてはなりません。

 

もっと良い方法はないのでしょうか?

 

実は、あります!「家族信託」です!

父が元気で、判断力がしっかりしている今のうちに、実家の管理や処分を託してもらっておくのです。家族信託を利用すれば、長女(受託者)は、父のために(信託目的)、父の家(信託財産)を管理・処分することができます。

信託に関する税金は、登録免許税のみ。それも税率は贈与(2%)よりも低い(0.4%)です。

贈与税や不動産取得税はかかりません。

その後、長女が受託者として父の家を売却した場合、父が売却したものとして、要件を満たせば譲渡所得税の特例が受けられます。

ですから、「家族信託」をお勧めします。