土地を貸しているのに、認知症で借地権契約の更新ができない?!

土地を貸しているのに、認知症で借地権契約の更新ができない?!

~認知症対策としての家族信託~

 

 事業用借地権を利用して土地を貸している場合、契約更新のため、または事業用定期借地権に切り替えるため、公正証書を作成しなければなりません。公正証書で契約をする際には、契約の内容を本人がきちんと理解しているかどうか、公証人が確認します。認知症になってしまい、判断力がとても低下している、あるいは判断力がほぼ無い、という状態では、公正証書は作成できません。つまり、契約更新ができません。

 判断力が低下した、あるいはほぼ無い、という場合には、成年後見制度を利用します。土地を貸している地主さんの場合、財産が多いので、成年後見人は専門家(弁護士・司法書士など)が選任されることになるでしょう。選任された成年後見人が、判断力がなくなった本人に代わり、契約更新をしてくれます。しかし、それだけでは終わりません。判断力がなくなった本人の判断力が元に戻るか、または死亡してしまうまで、成年後見は続きます。

 大規模小売店舗(飲食店、衣料品店、ドラッグストア等の店が集まって商業地を形成しているもの)等の場合には、地主はひとりではなく、数人から十数人ということが多いでしょう。その場合に、その地主の中のひとりあるいは数人が認知症で契約の更新ができない、となれば、他の人たちに多大な迷惑をかけることになります。「契約の更新が間近にせまって、慌てて成年後見の申し立てをした。」と、その先、一生、死ぬまで、本人の財産の全部について成年後見がされ、その間ずっと費用がかかるのだということ等を考える余裕もなく、焦って成年後見制度を利用することになるのかもしれません。

 そうならないように、対策をしておきましょう。

 それは、「認知症対策としての家族信託」です。あらかじめ、信頼のできる家族に頼んでおきましょう。土地を貸している場合、契約期間は20年、30年、あるいは50年と、長期にわたります。いざ、契約の更新となったときに、「判断力が無いからできない」では困ります。

 家族信託なら、いずれその土地を相続して継いでくれる人(子)に手続きをまかせておく、という組み方ができます。家族信託を利用すれば、数十年後のことを心配する必要もなくなり、相続人となる子も、安心できます。